幌尻岳

　２年ぶりの北海道。残る百名山は道央の３つの山だ。今回は事前予約の航空券を予約して飛行機で北海道入りすることにした。
　１日で幌尻山荘まで行くのは無理と感じ、前日に豊郷のYHに泊まることにした。　翌日、富川の駅に着くと駅の待合室に３人の中高年の登山者がいた。早速幌尻岳にこれから登るか聞いてみる。そのうち２人は夫婦者で、すでに下山してきたとのこと。もう１人がこれから登るようで、情報を聞いていたところだった。その人は埼玉県志木市のＮ(64歳)と後でわかり、この人と以後３日間行動することになった。
　振内からのタクシーを予約済みとのことで、自分も便乗させてもらうことにした。振内にバスが着くとすでにタクシーが待っていた。振内にはかつての鉄道の駅があったが、ゆっくりと見ることもできずにすぐに出発した。途中買い物をし、営林署で山小屋使用の手続きをしたりで、登山口の林道のゲートにはそれほど早くもない時間に着いた。
　林道ゲートにつくとメーターの料金は11,610円になっていた。10円はおまけで、5,800円ずつ払った。
　林道はかなりアブが多く、ゆっくりとは歩いていられない状況だった。虫よけスプレーの効果はあまりなかった。徒渉のために短パンになっていたので「どうぞ血を吸ってください」といわんばかりの状態だ。これにはまいった。
　徒渉点に着くと今までのアブもほとんどいなくなり、いよいよ地下足袋に履き替えて入水だ。沢の水は冷たくなく、気持ちいいくらいだ。水量も少なく、膝までには届かなくて快適だ。途中７回徒渉した後でしばらく登山道を歩き、その後さらに９回徒渉があった。最後の徒渉は小屋(幌尻山荘)のすぐ目の前だった。
　小屋は新しくはないが快適で、便利な小屋だ。そこそこ多くの登山者がいたがそれほど窮屈でもなく、翌日に備えてゆっくり休んだ。
　幌尻岳へはデイバッグでのらくちん登山だ。前日一緒に入山したＮさんと一緒に歩き出す。Ｎさんは64歳にもかかわらずかなりの健脚で、この幌尻岳は今回の山行全22日行程中の16日目ということで、それもテントを担いでの単独行だ。一緒に歩いたが、年齢を感じさせない歩きで、ついて歩くのがやっとのような感じだった。
　命の泉は水量が少なく、小さなカップでほんのわずか口にした。小屋で水筒に水を入れてきてよかった。
　稜線に出てしばらく歩くと北カールが見え出し、花も多く見られるようになってきた。Ｎさんは余裕の様子で盛んに花の写真を撮っていた。稜線から見える形のいい山が幌尻岳かと思っていたが、地図で確認すると戸蔦別岳であることがわかり、どうも幌尻岳はすぐ近くのようだ。ちょっと元気が出てきた。
　頂上に着くと早い昼食を兼ねて大休止をとった。Ｎさんはカップ酒の日本酒を飲んでいた。周りは多くの山並みが見えたがどの山がどれなのかさっぱりわからず、ただ景色だけを眺めた。
　七つ沼カールには少し残雪が残っていた。ここは熊の天国とのこと。でもここにテントを張る人も多いとのこと。大丈夫だろうか？我々はそのまま稜線を歩いて七つ沼カールには降りなかった。戸蔦別岳に登る頃からだんだんと幌尻岳の姿が見えてきた。しかし無情にも自分のカメラのフィルムはなくなってしまった。後で、Ｎさんが撮った写真（この幌尻岳の写真はＮさんが撮ったもの）をわざわざ送ってくれた。この戸蔦別岳あたりから見る幌尻岳が一番格好のよい姿だ。小屋から幌尻岳のピストンする人にはこの姿は見られない。ここはやっぱり戸蔦別岳経由で一周するべきだ。
　下山は中戸蔦別岳からの急な道で、小屋の近くでは再び徒渉があった。８回中３回だけ水に浸かった。水中の石はよく滑った。小屋についてもう一泊した。この日はかなり混んで、かなり窮屈な思いをした。
　翌日は下山するだけで、やはり林道ゲートまでタクシーが来ることになっている。やはり徒渉は16回で数え間違いなかった。やや速くゲートに着いてしまったが、すでにタクシーは待っており、アブにつきまとわれることもなくすぐに冷房の利いたタクシーに乗り込んだ。Ｎさんとは振内まで一緒だ。この後Ｎさんは羊蹄山を登り、その後東北に行くとのこと。この幌尻岳が百名山の98番目で、その後羊蹄山、雨飾山で完登するとのこと。
　バスの便が悪いため、Ｎさんが振内で降りた後、自分はその足で日高町までタクシーで行った。振内では10,980円（Ｎさんが5,500円払ってくれた）だった料金は、日高町に着いたときには18,630円にもなっていた。