妙高山

　妙高山へは一旦黒沢ヒュッテに出てからの登りである。黒沢ヒュッテは地図の上では高谷池ヒュッテと同じように池のそばに建ってはいるのだが、実際は少し離れていて、高谷池ヒュッテほどのよい立地条件ではなかった。
この日も天気は上々で、暑さとの戦いになりそうな感じではあったが、幸いにも登山道には朝日が当たらずに涼しく歩けた。ペースもまあまあで、体調もよい。地図によれば頂上直下がきつそうで、覚悟したが案の定きつかった。しかし思いの外簡単にひょっこりと頂上に出た。頂上からは西側半分の展望が得られ、後立山連峰らしき峰々が見られた。残念ながら、ほかの方角は分厚いガスのために何も見えなかった。
　燕温泉に向けて急な岩場を下った。始めはかなり急で、途中道に迷いかけてしまった。やがて緩やかになってホッとする。マラソンランナーのような学生風の若者とすれ違った。しばらく歩くと次々にすれ違う。昨日のことを思い出す。中には女子学生もいる。かなり下ると人数も増え、全部で十数人にもなっただろうか。この暑いのによくもまあ走って登れるものだと感心する。自分にはとうていできそうにもない。そうこうしているうちに程なくして燕温泉に着いた。学生がいなければ何も考えずに黙々と下るところであったが、おかげで長い下りに退屈せずにすんだ。というのも、前日のこと（ストックを持った学生のこと）と合わせて今日のことを考えていたためだ。
　燕温泉は宿が４，５軒あるだけの小さな温泉で、訪れている人も少ない。旅館の内湯に入ろうとしたが日帰りの内湯はないようで、日帰り客は露天風呂（もちろん無料）に入るのが当たり前のようだ。当然露天風呂に入る。露天風呂があるのは始めからわかっていたが、遠いところにあるらしくて、面倒くささがあったため、内湯を考えた。しかし先ほどのマラソン学生に聞いて歩いて５分の所を教えてもらった。さっぱりした気分で燕温泉を後にした。