鹿島槍ヶ岳

　朝方の深い霧はだんだん取れて穏やかに晴れてきた。稜線の影の部分にはわずかに雪がある。前日あたり降ったのだろうか。気温はそれほど低くもなく、苦労なく歩くことができた。
　キレット小屋はすでに営業期間を過ぎ、堅く閉ざされていた。文字通りキレットに建つ小屋で、前後にはなだらかな道はない。ここからしばらく歩くと最大の難所「八峰キレット」がある。写真では怖そうだが、実際にはたいした危険もなく、鎖もしっかりしているためにほとんど緊張することもなく通り過ごした。スリルがあまりなくてややガッカリ。まあ練習がてらに歩くにはちょうどよいかもしれない。
　鹿島槍北峰は縦走路から少しはずれてはいるが、当然のことながら立ち寄る。このころから天気もだんだん良くなってきて、晴れ間ものぞけるようになった。思ったよりも北峰と南峰の間があいていてきつかった。南峰で昼食をとることにした。五竜山荘で頼んだ昼の弁当は思っていたよりもかなり豪華だった。このことばかりが印象的であまり山については印象がなかった。
　当初の計画では１泊目に五竜山荘、２泊目に冷池山荘に泊まる予定であった。地図上ではとうていこの計画にしかしようがなかったが、実際に歩いてみると意外とコースタイムよりも速く歩け、この日のうちに帰ることもできそうになってきた。１日速く帰れるのはとてもありがたいことだ。できるだけペースを上げる。はたして扇沢のバス停に時間前に着けるか。
　種池山荘でバスの時刻表を確認する。何とか間に合いそうだ。それも最終バスよりも前のだ。最終バスでもこの日のうちに帰ることができるが、できれば１時間前のバスで途中大町温泉郷で汗を流していきたい。気を抜かずにしっかりと歩く。
　間に合った。大町温泉郷で汗を流してさっぱりした気分で最終の列車で帰ることができた。