武尊山

　武尊山はいろいろなコースからの登頂ができるが、いずれもそんなには簡単に登れない感じで、車を使ってかなり奥にまで入っても丸１日はたっぷりかかる山だ。ひとつの山としてはなかなか堂々としたものがあるためか、以前からは気になっていたが、いよいよ登る時が来た。上越方面は遅くまで登り残した山が多かったが、この武尊山が最後となるわけだ。ついでに皇海山も近く、新しい沢ルートが楽そうだということで、２日連続で登ることにした。
　車で川場野営場まで入る。野営場といっても今はあまり使われていないようで、炊事場の水道の蛇口からは一滴も水が出てなかった。しばらく歩くと花咲尾根との分岐となり、川場尾根方向に向かう。しかし、沢に紛れ込んでしまい、20分ほど時間を無駄に過ごしてしまった。しかし、先ほど得られなかった水をこの沢で入手できたので、全く失敗とも言えないだろう。
　川場尾根からのルートは岩場が多く、たいへんそうだとの情報があったが、それほどでもなく難なく通過できた。むしろただ尾根道を歩くより変化のあるこのコースが正解だった。前武尊には日本武尊の銅像が建っていた。ご丁寧にも屋根がついた建物のようなものの下にあった。日本武尊は下界を眺めているようだった。剣が峰は数年前から崩壊のために通行禁止となっており、巻き道を歩くことになる。行きでは剣が峰の北峰にも気づかずに通り過ぎてしまった。
　武尊牧場からの道と合わさるところから急に人が多くなってきた。いつものように中高年の人が多い。頂上の少し手前では雪渓の上を歩く。武尊山の頂上はにぎやかだった。広いとは言えない頂上には30〜40人ぐらいの人だかりで、そのほとんどは大学生のワンダーフォーゲル部らしき若者だった。この時ばかりは自分が年寄りの部類に入ってしまった。平均年齢は20代後半か。中高年ばかりでなく、若い者たちも大勢になれば同じようにうるさい。年齢は関係ないようだ。
　下山は途中の剣が峰にも登ってみる。覚悟して登ってみたが、あまり大したこともなく楽だった。つまらない。前武尊からは花咲尾根ルートで戻ることにした。岩場のない初心者でも安心して歩けるルートだ。しばらく歩くとスキー場の最上部に出た。ここには小さな石像が建っていて、スキー場の方向を向いている。その顔は何かとても悲しそうに見えた。スキー場開発で山肌を削り取られた武尊を悲しんでいるように見えた。