白山

　白山に行くには夜行がいいと思い、時刻表でいろいろ調べるが、金沢から別当出合に出るバスに間に合うにはＪＲでは時間的に無理で、夜行バスに頼らざるを得なかった。夜行バスの方が安いこともいい点だ。しかし眠れるか不安があった。しかしその不安は当たらなかった。リクライニングの角度が半端じゃない。これなら眠れる。おかげで夜行にしてはかなり満足できるほど睡眠がとれた。
　この日は室堂までで楽な行程だ。気持ちにゆとりを持たせて心持ちゆっくり歩く。それでも何人かの登山者を抜いた。やはり速いのか。あまり極端にゆっくり歩くとむしろ疲れる。あまり気にせずにマイペースで歩くことにする。
　多くの登山者はもっともポピュラーな砂防新道を登るらしい。この道は楽だ。初心者が登るのはもちろん、どんな人が登っても無理せずにマイペースで登れる。途中の甚之助避難小屋前では多くの人たちが休憩していた。ちょっと早いが自分もここで昼食にした。たっぷり時間をとってのんびりと休んだ。
　室堂に行くにはいくつかのコースがあり、せっかくだからと思いやや遠回りのパノラマコース(一番東側にコースで、展望歩道ともいう)で登ることにした。この時期は花も少なく、紅葉も始まる前でやや寂しい。
　室堂には何棟かの建物があり、どの建物が宿泊小屋か迷うほどだ。結局すべての建物は同じ経営とわかり、やや驚いた。宿泊の手続きをすると部屋に案内された。この日はそれほどの混みようではなく、ゆったりとすることができた。
　まだ時間的に早いので空身で頂上付近を散策することにした。御前峰は白山の最高点で、すぐ下に室堂の小屋と反対側にはいくつかの池が見える。大汝峰と剣が峰も見える。剣が峰には登路がないはずだが頂上には何か標識のような物が建っている。誰かが登って立てたのだろうか。御前峰からの眺めは近くに大きな山がないこともあってかあまり迫力のある眺めではなかった。
　いくつかの池があるところに下りてみる。ただの池だ。これといっておもしろくはない。大汝峰にも登ってみる。頂上は広くてここが頂上といった感じはなく、なだらかだ。風が強くなってきた。でもここから眺める白山の主峰である御前峰はやはりいちばん高い。
　目的の山は頂上に登ることはいいことだが、近くの別の山から眺める姿を見ることも大切だと思う。それの方が実感がわく。四国の剣山、北海道の幌尻岳など。いずれも頂上だけではつまらない山だ。
　翌日の天気はこれといって素晴らしくいいわけではなく、むしろ前日に登った日の方がよかったかもしれないので、あえて登ることもせずにゆっくりとした時間をとって観光新道経由で下山することにした。バスの時間は12:30ということもあって、できるだけゆっくり歩くように心がけたが、重力にはかなわない。気がつくといつものようなペースで歩いてしまう。別当出合にはやはり早く着いた。室堂の小屋でとなりに寝た人としばし山の話をしている間に時間となった。帰りは金沢からこの春開通したばかりのほくほく鉄道経由で帰った。
　あんなに意識してゆっくり歩こうと努力したのに、結局翌日にはいつもと同じかそれ以上の筋肉痛が下半身を襲っていた。