荒島岳

　　前年のこの時期に来るつもりが雪のため、１年伸びてやっとの事で来ることができた。夜行列車を使って朝福井に入る。毎度のことではあるがあまり眠れず、うとうとしただけであった。あまり神経質にもならず、楽観的な気持ちで荒島岳に望むことにした。福井ではあまり列車の乗り継ぎがよくなく、登山口最寄り駅の勝原に着いたときはすでに昼が近かった。
　紅葉の見頃は１週間ほど前のような感じだったが、まだ晩秋の美しさを残していた。銀嶺荘は思っていたよりも古いスキー宿だった。目の前がスキー場のゲレンデである。このゲレンデの真ん中を歩く。やはりゲレンデは下るものだ。歩いて登るのはつまらない。何度かジグザグに登り返すとスキー場の最上部に出た。ここからは樹林帯の中を登った。中途半端な傾斜の登りで、きつからず緩からずで休憩をするところを見つけられずに苦労する。夜行のせいもあるのか、そのときは思ったよりもきつい山と感じた。時間的に考えても普通なら楽に登れる山のはずだ。
　やっとの思いで、シャクナゲ平に着く。シャクナゲ平とはいってもシャクナゲはなかった。ここからの荒島岳は大きかった。手前にこぶのように２つほど小さなピークがあって、この先急坂があることが忍ばれる。一旦鞍部に下り、そこから再び登り返すような感じだ。実際に行ってみるとかなりの急坂で、鎖が何カ所にも着いていた。おまけに下がやや濡れていて、滑りやすかった。50分後にやっと頂上に着いた。途中頂上までには東京から来た団体や、個人で来ている人たちが多くいたが、頂上にはやはり多くの人がいた。
　頂上は古いコンクリートの建物と電波塔のようなものが２基立っており、お地蔵さんもあった。この日は天気も良く、白山はもちろん、御岳や乗鞍鞍などの他、北アルプス方面の山々も見えた。前年とはうって変わって今年は暖かいとのことで、この荒島岳はもちろん、白山にさえも雪はない。頂上ではやや風があったものの、ややのんびりしすぎた。
　帰りの列車の時間が気になり、足早に下山することにした。下山コースは登りとは違うコースで、稜線上を歩いて小荒島岳経由で下唯野駅に出るものだ。詳しい地図やガイドブックがなく、気持ちが焦りながら下った。下唯野駅には列車時刻の15分前に着いた。この日のうちに米原まで移動した。